法人・個人の消費税申告と車両売却について
消費税の経理処理を説明する前に、法人と個人の車両売却に伴う経理処理について、大まかに説明したいと思います。
普段の事業に係る経理処理は日常的なことなのですが、車両の売却というと日常的にはあまりなく、ややこしい経理処理だと思ってしまいがちです。
法人の場合は、売った金額から原価(車両の簿価)を差し引いた額が固定資産売却益(損)となります。
この原価とは、車両の取得価格から減価償却費を差し引いた額です。
そしてこの減価償却費は、売却した月まで償却可能ですので、5月に売却をした場合は、月割計算をして5月までの減価償却費の計上をします。
個人の場合は、事業所得とは別の総合譲渡所得となります。
そしてこの総合譲渡所得は所有期間が5年以内か5年超かで変わってきます。
所有期間が5年以内の場合は、売った金額から原価を差し引き、さらに特別控除額50万円を引いた額が譲渡所得額となります。
次に所有期間が5年超の場合、上記の譲渡所得の2分の1が譲渡所得額となります。
例として、簿価100,000円の車を700,000円で売却し現金で受け取った場合を考えてみます。
法人の場合の仕訳
借方 現金 700,000円
貸方 車両 100,000円
固定資産売却益 600,000円
となります。
個人事業主の場合です。
借方 現金 700,000円
車両 100,000円
事業主借勘定 600,000円
この経理処理は、所有期間関係なく同じです。
法人の場合、固定資産売却益となった部分が総合譲渡所得となるため事業主仮勘定で処理することになるだけです。
次に総合譲渡所得の計算をします。
所有期間が4年だった場合は、600,000円から特別控除額500,000円を引いた100,000円が総合譲渡所得となります。
所有期間が6年だった場合は、600,000円から特別控除額500,000円を引いた100,000円の2分の1の50,000円が総合譲渡所得となります。
また、この総合譲渡所得は、損益通算ができるので、事業所得や不動産所得で損失が出ている場合は、通算することが可能です。
消費税について
車両の売却の際の消費税は、売却益に係るものではなく、売却代金に係るものです。
ですので、売却損が出た場合も、消費税は係ります。
車両の売却代金とは別にリサイクル料を受けっとった場合は、車両の売却代金が消費税の課税売上となりますが、リサイクル料込みの売却代金の場合はリサイクル料を除いた額が消費税の課税売上となります。
リサイクル料は、預託金として消費税がかからないからです。
例として、簿価200,000円リサイクル料8,500円の車両を、リサイクル料込みで500,000円(税込み)で売却し現金で受けとった場合を考えてみます。
リサイクル料 8,500円は消費税不課税ですので、
売却代金500,000円 − リサイクル料8,500円 = 491,500円 (税込み)
491,500円 ÷ 108 × 100 = 455,093 (税抜き売却代金)
491,500円 ÷ 108 × 8 = 36,407円 (車両売却に係る消費税額) となります。
仕訳としては、
借方 現金 500,000
貸方 車両 200,000
預託金 8,500
固定資産売却益 255,093
仮受消費税 36,407
となります。
普通の事業の場合、消費税の申告は売った時の消費税(仮受消費税)から、払った消費税(仮払消費税)を差し引いた消費税額を納付することとなりますが、今回の場合は払った消費税(仮払消費税)はどうなっているのでしょうか。
それは、もうすでに車両を購入した際に払った消費税(仮払消費税)を差し引いているので今回は何も差し引くものがないということになります。
ここまでは、消費税の課税事業者の経理処理です。
気を付けないといけないのが、課税売上が1,000万円以下で消費税が免税となっている法人・個人が車両の売却をした場合です。
この売却は下取りの場合も同様です。
課税売上950万円の事業者が車両の下取りで車両の買い替えをしたとき、下取り代金が51万円の場合は、この51万円も課税売上となるので、1,001万円が課税売上となり、翌々年の事業年度から消費税課税事業者となってしまいます。
車両の下取り価格が49万円なら、課税売上が999万円で消費税は免税のままです。
車両の売却価格(下取価格)は高ければ高いほうが嬉しいですが、この2万円の差で消費税の課税事業者になるか、課税売上が1,000万円以下で免税のまま決算を迎えるかは大きな差となってきます。
消費税が免税となっている事業者が車両の買い替えを検討している場合、一度、翌年の売り上げ見込みまで考えてみてください。
今年度は売り上げがよく、ぎりぎりで1,000万円を下回ったけど翌期の見通しはちょっと悪い…という場合なら、急がず翌期へ車両の買い替えを延ばせば、消費税の免税事業者のままとなるのです。