放置車両の処分方法について

 

 

放置車両は勝手に処分していいの?

駐車場や空き地などに放置されている車を見かけることが時々あります。

 

長年放置されてることでぼろぼろになり危険で、放置された場所が自分の所有地であった場合は、とても困ります。

 

そういった放置車両は一刻も早く処分したいですよね。

 

放置されているとはいえ、持ち主がいるであろう車をなにも言わずに勝手に処分していいものなのでしょうか?

 

結論から言うと、長年放置されていたとしても、どういう形(廃棄したり転売したり)であっても所有者でない人が勝手に車を処分することは出来ません。

 

これは、自動車のみならず自転車やバイクであっても同じことがいえます。

 

たとえ放置されている場所が自分の所有地であったとしても、勝手に処分してしまうと、車の所有者には『所有権』があるので、その『所有権』を侵害したことになります。

 

つまり、万が一、その所有者に車を処分したことに対しての損害賠償を請求された場合は、そのお金を支払わなくてはいけなくなってしまう可能性がでてきます。

 

例えば、数週間なり数ヶ月の間、処分を促す看板などを立てた後に期間が過ぎたからと、処分した場合であっても、所有権の侵害という観点でみると、全く問題がないとは言い切れないのです。

 

とはいえ、所有地等に放置された車両をそのままにしておくわけにはいきません。

 

勝手に処分できないのであれば、警察に連絡を入れて処分してもらうという方法はどうでしょうか?

 

実は、警察に放置車両の処分をお願いしても、対応はしてくれないのです。

 

 

 

警察はなぜ放置車両を処分してくれないの?

警察や行政に放置車両を処分する法的な義務がないことから、所有地等に放置された車両の処分をお願いしても対応することはまずありません。

 

というのも、日本の警察の権利の中に『民事不介入の原則』というものがあり、民事紛争(損害賠償や所有権の争い、相続争いなど)やそれに類似する案件には、介入することが出来ません。

 

この「民事不介入の原則」によって、いくら私有地にある放置車両の処分をお願いしても、警察が立ち入ることは出来ないのです。

 

勝手に処分しても駄目、警察に連絡しても駄目。では、いったいどうやって放置車両を処分すればいいのでしょうか?

 

 

 

放置車両を処分するまでにどういうことをすればいいの?

勝手に処分できず警察も介入してくれない困った放置車両ですが、土地の所有者がなにも出来ないわけではありません。

 

法的には、自動車の所有者に対して、「妨害排除請求権」や「損害賠償請求権」を行使することができます。

 

妨害排除請求権というのは、車両の撤去を求める権利です。損害賠償請求権に関しては、もちろん賠償を請求する権利です。

 

何に対しての請求する権利かというと、放置してある自動車に対して、自動車をその場所に駐車するために「一般的に支払われる賃料相当額の請求額」を請求する権利です。

 

つまり、長年他人の私有地に車を放置していたわけですから、駐車代金を請求する権利があるというわけです。こ

 

とはいえ、どちらにしても、車の所有者がわからないとどうすることも出来ません。放置された車両の多くは、知らない間にその場所に放置され所有者が誰であるかわからないことも多いですよね。

 

では、放置車両を処分するためには、一体どういったことをしなければいけないのでしょうか?

 

 

放置車両の所有者を調べる

放置車両の所有者を知っている場合は、その所有者に連絡をして処分してもらえるといいのですが、殆どの場合、持ち主が誰なのかわかりません。ですからまずは、処分したい放置車両の所有者を調べましょう。

 

ただ、車両が普通自動車なのか軽自動車なのかによって手続きの方法が異なります。

 

普通自動車の場合は、『自動車検査登録事務所(旧:陸運局)』に問い合わせて、「登録事項等証明書」を発行してもらいましょう。そうすることで、所有者の氏名や住所を特定できます。

 

証明書を発行してもらうためには、放置車両のナンバープレートのナンバーが必要です。

 

ナンバープレートを事前にメモしたり、写真を撮ったりしておきましょう。

 

ただ、証明書は個人情報に該当するため、ナンバープレートの情報だけでは、簡単に証明書の情報を開示してくれない場合があります。

 

その場合は、身分証明書と車の車台番号の下7桁を提示することで開示してもらえることがあります。

 

車台番号は、ボンネット内のエンジンルームの奥に打刻されているので、放置車両のボンネットを開けて確認しておきましょう。

 

ただし、長年放置されている車両は危険も伴うので、確認するときは十分に気をつけてください。

 

 

軽自動車の場合は、放置車両が軽自動車であった場合、所有者の確認は『軽自動車協会』に問い合わせます。ただ、照会するには最寄りの軽自動車協会まで直接行かなければいけません。

 

協会の窓口では以下のものの提出が必要です。

 

  • 土地の所有者の登記簿謄本
  • 放置車両の前後のナンバープレートが確認できる写真2枚
  • 車両を放置されている土地の地図
  • 身分証明書のコピー

 

これらを窓口で提出すると、軽自動車検査ファイルの情報が閲覧が可能になります。もし、ナンバープレートがない場合は、車台番号を確認できれば、所有者の情報を取得できます。

 

 

警察に相談(連絡)する

確実とはいえませんが、警察に相談や連絡することで、放置車両をスムーズに処分できる可能性があります。

 

とはいえ、やはり警察が車を処分してくれることはめったにありませんが、車の所有者を調べることはしてくれます。

 

警察に連絡して所有者を調べてもらうことで、万が一放置された車が何らかの犯罪に関係したものだった場合、証拠として警察がその車両を移動させたり、お願いして警察から車両の所有者に連絡を入れてもらうことで、その所有者が自動車を引き取りに来る場合もあります。

 

 

放置車両の所有者に処分を要求する

車両の所有者の情報が明確になったところで、車両の撤去の要求を内容証明郵便で送付しましょう。

 

内容証明郵便で放置車両の撤去を要請することで、その事実を第三者(郵便局)に証明してもらうことが出来ます。

 

内容証明を送った後にも、所有者から全く対応がない場合は、裁判所で競売手続きに関する簡易訴訟を起こます。

 

そこで勝訴できたら、放置車両の所有権を自分に移転できるので、自分の意志でいつでも処分の手続きができます。

 

ただ、競売手続きの裁判ができるのは、放置車両に資源価値があった場合のみです。価値を持っていない場合は、勝訴判決に基づき「明け渡し強制執行」を行ってください。

 

それらの手続きを踏んだ後、放置車両を処分するときであっても、内容証明を送ったときから処分終了日までの過程をすべて記録して開示できるようにしておきましょう。

 

そうしておくことで、万が一相手側が訴訟を起こしたとしても、リスクを最小限に抑えることが出来ます。

 

※車を放置する人の中には、法的な知識等があり、所有者を見つけ出せないようにナンバープレートや車台番号を削り取る人がいます。

 

また、所有者がわかっても、所在地が不明で連絡ができない場合があります。

 

もし、放置車両や所有者がそういう状態であった場合は、車両に撤去の要求と期日以内に撤去しない場合に処分する旨を書いた張り紙をし、期日以降に処分しましょう。

 

この場合も、すべての過程を記録しておきましょう。